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非純正カメラの取り付け

はじめに

  写真やビデオ撮影用のカメラは顕微鏡メーカーから販売されていますし、理科学機器メーカーからも顕微鏡用かめらが販売されています。これらの製品は、それぞれに特徴がありますが、とりあえず、普通に写真やビデオ撮影が出来ればよいのでしたら、民生用のデジタルカメラを取り付けるという方法があります。最近の民生用デジタルカメラは、写真だけでなく4Kビデオも普通に撮影できますし、タイムラプス機能や、数倍程度ですがスローモーションも可能で、用途によっては、専用のカメラよりも優れており、また価格も高くはありません。以下、民生用デジタルカメラの顕微鏡への取り付け手法と注意点を記します。

2つの撮影手法

 顕微鏡の画像撮影手法には、コリメート法と直焦点法があります。コリメート法は、目視観察ができる状態で、目の位置にカメラを置いて画像撮影する方法です。かつては、コリメート法に適したカメラが少なかったのですが、現在ではスマートフォンやタブレットのカメラを使えば、簡単に実用的な画像撮影が可能です。直焦点法は、対物レンズによる実像が形成される位置にカメラの撮像素子を設置し、直接結像した画像をそのまま記録するものです。対物レンズの像を直接結像する場合と、途中で投影レンズを入れて、結像した拡大/縮小像を記録する場合があります。民生用デジタルカメラの能力が発揮されるのは直焦点法ですので、ここでは、こちらについて話を進めることにします。

 

顕微鏡へのカメラの取り付け

 顕微鏡に民生用デジタルカメラを取り付ける主な方法は次の2通りです。まず、お使いのシステムに適合したフィルム写真撮影ユニットがあり、そのユニットが、かつての1眼レフに接続するタイプのものでしたら、マウント変換アダプターを通して、多くのメーカーのフルサイズミラーレスカメラを取り付けられます。ニコンの場合でしたら、写真撮影ユニットのカメラ部分が外せるものは、ニコンFマウントですので、マウントアダプターを介して、ニコンでもソニーでもキヤノンでもパナソニックでもお好きなミラーレスカメラを装着できます。フィルム撮影ユニットにはシャッターがついていて、光路をふさいでしまうので、分解してシャッターを取り外して、単なる筒としてしまうのがお進めです。オリンパスの場合はOMシステムのカメラアダプターがあるので、それを取り付ければ、あとは、マウントアダプターを介して、上記の様々なメーカーのカメラが取り付けられるようになります。

 最近の顕微鏡は、フィルムでの撮影をしなくなったため、フィルム撮影ユニットが存在せず、ニコンFやオリンパスOMマウントが付けられなくなっているようです。幸いなことに、その代わりにCマウントアダプタはどちらのメーカーにも存在しています。Cマウントアダプタには、素通しでレンズが入っていないもののほかに、縮小光学系が入ったものもありますが、入手すべきは素通しのアダプターです。このCマウント部分に、C-μ4/3アダプターを組み合わせれば、μ4/3規格のパナソニックやOMシステムのカメラが装着できます。物理的には、それ以外のソニーやニコンも装着できますが、後述する理由によりお進めは致しません。

 直焦点法のバリエーション的なものとして、目視観察の接眼レンズの代わりに、カメラが装着できる撮影用アイピースを入れて、 撮影するシステムもあります。簡便ではありますが、Cマウントからμ4/3の接続ができるので、かつてほどの魅力はなくなったと考えています。

 いずれの方法で取り付けるにしても、目視観察とカメラのピント位置が一致するようにしてください。目視観察と大きくピントがずれるようだと、操作性が悪いばかりでなく、撮影画像がベストではない危険性があります。

 

イメージサークルと撮像素子サイズ

 顕微鏡対物レンズによって得られる良好な像のサイズ(イメージサークル)は直径22 mm〜26 mm程度です。フィルムや撮像素子の対角線長がイメージサークルより大きいと、得られた画像の周辺部は画質が悪かったり、まったく写らなかったりとなってしまいます。このため、対物レンズの像を直接撮像面に結像するのではなく、投影レンズにより像を拡大して、イメージサークルが対角線長以上に拡大する必要があります。

 撮像素子の対角線長がイメージサークルより短い場合は、画面全体の画質は担保されますが、対角線長より外側の部分は記録できませんので、目視観察に比べて狭い範囲しか記録できなくなります。このため、対物レンズ像を直接結像するのではなく、投影レンズによりイメージサークルを撮像素子の対角線長程度に縮小することが望まれます。

イメージサークル

 図に示したのは、直径20mmの円と、1/2インチ、1インチ、μ4/3、APS-C、35oFullの撮像素子サイズです。円の大きさは通常の顕微鏡の視野範囲相当です。図から分かるように、直焦点の場合に撮像素子が1/2インチだと目視観察領域のごく一部しか撮影できません。1インチはだいぶまともで、μ4/3だと一部視野外も映り込むが、この程度なら、耐え遺物レンズのイメージサークル(22mm)にほぼ収まるので、画質は問題ないでしょう(これは、ユーザー側のセリフでオリンパスが4/3用の接続ユニットを出した時は、レンズを組み込んで1.2倍としてイメージサークル内に収まるようにしていました。)。APS-Cになると、画面の周辺の画質は劣化したり暗くなったりすると思いますし、35mmフルサイズだと外面の中央部分しか活用できそうにありません。参考までに、同じ試料を目視(コリメート法)とμ4/3で撮影した画像を並べて示します。

 

比較

 フィルム時代の写真鏡筒には2倍から5倍程度の拡大投影レンズがありました。2倍の拡大レンズを使えば、35oフルサイズ全体にわたって良好な画像が、目視観察に匹敵する範囲で撮像可能です。逆に、2倍投影レンズとμ4/3の組み合わせでは、目視観察の1/4程度以下しか撮影できなくなってしまいます。

 

 下記の表に、いくつかの種類の撮像素子の大きさと、イメージサークルが22mmと26.5mmに対する対角線の比率を示します。たとえば、型名識別記号がCの1インチの撮像素子は、対角線長が15.9mmですので、イメージサークルが22mmの対物レンズを使う場合には、0.73倍まで縮小することができます(この倍率では顕微鏡の光軸と撮像素子の中央が正確に一致している必要がありますので、現実的にはもう少し倍率が高い方がよいでしょう。)。この値以下の倍率では画面の四隅の画質が低下したり、暗くなってしまいます。

 顕微鏡メーカーのカタログを見ると、様々な倍率のCマウントアダプターが用意されています。Cマウントのカメラを取り付ける場合は、カメラの撮像素子サイズをもとにアダプタ倍率を定めるとよいでしょう。ただ、アダプタにもイメージサークルがあるので、それが撮像素子をカバーしているかは注意する必要があります。例えばニコンの等倍Cマウント投影レンズはイメージサークルが16mmのため、μ4/3と組み合わせると、中心部分のΦ16mmの円内しか映りません(投影レンズを使わず直投影すれば全面に写ります。)。

 

型名識別記号 撮像素子 水平長(mm) 垂直長
(mm)
対角長
(mm)
アスペクト比 22.0比 26.5比
12.8 9.6 15.9 4:3 0.73 0.60
  13.2 8.8 15.9 3:2 0.73 0.60
  1/1.2 10.72 8.084 13.4 4:3 0.61 0.51
H 2/3 8.8 6.6 11.0 4:3 0.5 0.42
  1/1.8 7.2 5.4 9.04 4:3 0.41 0.34
D,S 1/2 6.4 4.8 8.0 4:3 0.36 0.3
  1/2.7 5.3 4 6.67 4:3 0.3 0.25
Y.T 1/3 4.8 3.6 6.0 4:3 0.27 0.23
Q 1/4 3.6 2.7 4.5 4:3 0.2 0.17
Four Thirds(μ4/3) 4/3 18 13.5 22.5 4:3 1.02 0.85
APS一眼(D1) APSサイズ 23.7 15.6 28.4 1.52 (3:2) 1.3 1.07
35mm ライカ判 36.0 24.0 43.3 3:2 1.97 1.63

表:各種撮像素子サイズと標準的イメージサイクルに対する比率

 

 現在のレンズ交換式民生用ミラーレスのフォーマットは、いわゆる中判を覗いて35mm、APS-C、μ4/3の3種類です(かつては1インチのニコン1という選択肢もあったのですが、残念ながら新品は入手できなくなっています。)、効率よく広い範囲を撮影するには、μ4/3なら、ほぼ等倍、APS-Cは1.3倍、35mmは2倍程度の拡大率となりますが、拡大投影レンズは2倍以上の物しか見当たらないので、カメラの選択肢は35mmかμ4/3となります。

 μ4/3だと、途中に投影レンズを入れる必要がないので、その分、画像にゴミが入り込むリスクが減ります(投影レンズについたゴミは結構映り込みます)。μ4/3は35mmに比べて撮像素子の面積が1/4程度なので、同じ画素数でしたら画素サイズも1/4になり、高感度耐性が悪くはなります。しかし、顕微鏡撮影の場合は35mmの場合は2倍の拡大レンズを使っているなら、画像は元の4倍の面積に拡大されており、単位面積当たりの光量は1/4に低下しているので、μ4/3の高感度耐性の不利益はかなり打ち消されているだろうと思います。

 実際にμ4/3カメラを顕微鏡に取り付けた様子をお示しします。

とりつけ

 左側の写真のカメラと顕微鏡の間に見える金属部分はニコン純正のCマウントダイレクトアダプタです。Cマウントはフランジバック(取り付け面から撮像面までの長さ)が17.526mmであるのに対してμ4/3は19.25mmあり、普通に考えれば、変換アダプターは存在できないのですが、Cマウントの方が口径がかなり小さいことを利用して中に窪むような形で長さを合わせているようです。くぼみとCマウントアダプターの方が干渉していないか不安はあるのですが、目視とほぼピントはあっているので、まあ、大丈夫そうです。

 右は実際に使用している様子です。後ろ側のモニターはカメラからHDMIでダイレクトに映し出している画像で4K出力です。手前のPC上ではコントロールソフトが動いていて、PC上でも画像が写っていますが、拡大操作などをするためで、その必要がなければ、後方のデイスプレイだけで十分です。

 μ4/3のミラーレスカメラは、パナソニックとOMシステムから販売されています。それぞれ、複数機種ありますが、PCから接続して操作でき、その場でPCに(USB)転送できる機種を選ぶとよいでしょう。

 パナソニックとOMシステムを比べると(いずれも旧機種ですが)、OMシステムの方が制御ソフトの使い勝手はよい一方、撮影時も外部モニターに出力できるのはパナソニックのみなので、通常はパナソニック機種を使用しています。

 かつては、顕微鏡ビデオカメラからの画像は解像度が低く、目視観察の方が細部までよく見えていたのですが、4K解像度で目視に匹敵する範囲を見られるのは、特に目の衰えを感じる身としてはありがたいことです。また、目視では暗くて観察が困難な状況でも、画面上ではかなり明るくはっきりと見ることができる場合もありお勧めです。

 


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